王と鳥

ジブリに影響を与えた、というフレコミで
劇場公開された昔のアニメーション。
絵から逃げ出した羊飼い少女と煙突掃除少年が
鳥の手助けを借りて王から逃げる…
あらすじだけにあらっぽく言えばそんな感じ。


なんだかねぇ、悪い意味でなく
「スッキリしない」作品でした。

ーーーーーーーーーー以下ネタバレゾーンーーーーーーーーーーー

ネタバレしつつ踏み込んで書くと、
主人公は少年少女、王が悪者、鳥がお助け役、
というのがオーソドックスな見方のはずなんだけど
見てみると少年少女はすごく脇役で
タイトルの通り、「王と鳥」が主人公なのね、これ。


王様は暴君で、コミュニケーション不全で、
完全に専制君主制の悪弊の凝縮なの。
で、鳥は、奥さんを王に殺されていて(一見弱者)
子供がいて、逃げた少年少女を親切に助けてあげる……
……のだけれども。


少年少女は、超高層宮殿からどんどん下層へ。
下層には文字通り下層な人たちが住んでる。
で、鳥は少年を助ける為に詭弁でライオンを騙し、
宮殿に攻め込ませちゃう。(革命?)
で、下層の民衆は「鳥万歳!」状態なわけ。
まぁ、ここまではギリギリ鳥を善玉としよう。


でも、なぜか王の巨大ロボットを操縦できる鳥は
ロボットを乗っ取り宮殿をどんどん破壊。
王は吹き飛ばされ、二人は結ばれた(?)ものの、
宮殿ごと街も破壊されて、
最後は廃墟でロボットが考え込むポーズ、で終。


途中まで鳥を善玉として見ていたんだけど
破壊に走り始めたあたりから、なんだか
複雑な気分になってきて……。
現代社会のメタファーとはよく言ったもので、
王=資本主義 鳥=社会/共産主義 とか
王=アメリカ 鳥=「テロリスト」 とか
いろんな鬱々とした解釈ができて。


一方で、ライオンと同じ檻に入ってたクマが
盲目の音楽家(鳥および少年を助けてくれた)の
手をとって導いてる所とかしつこく描かれてて
なんか、その優しさもリアルだなぁと思ったり。


超現実的な社会の縮図なのに、なんだかサラッと
クールに描いていて、映画とはしてはオシャレ。


なんとも考えさせる映画でございました。
たまには悪くないけどね、こういうの。